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父、入院。(3) [遠距離介護]

母の入所を見届けて、下の事務階にて契約手続き。
ケアマネ曰く、本来は入所事前にやるべき手続きである。
肝心のケアマネは、急遽一身上の都合、で今日は来られない。

とりあえず四日間、の制約の元、こちらサイドで異存があるわけもない。
言われるままに、印鑑を押す。あらゆる考えられる事象とその対処について
懇切丁寧に説明がなされる。
ショートステイの空きを探しながら・・・・保険内の利用だと、利用日数に限りがあり・・・・・
現状は部屋のキャンセル待ちで・・・・・。

・・・しかしながら利用者の頭の中なんて、この際ピヨピヨ・・である。ヒヨコが鳴くばかり。
煩雑な事務手続きなど、意味を成すのはお役所トップたる国の関係機関だけだ。
常に「事件は現場で起きて」・・・いるのだ。事態が収束するか否か。身内が気にすることがこれ以外に
必要なのか。

途方にくれたお客様・然とした母親を見るのには多少は忍びない、という気持ちもある。
母親なり、自分の置かれた状況を(少しは)考えている。
この期に及んで足りないものばかりらしい。メモに刻みながら、あれとこれと、と探しては迷い、時折
「困った困った」 と 繰り返している。
「・・・こんなことになったのも、アンタが遠くにいるからイケナイんだよ。」
ワタシを見て、思い出したように云う。
「旦那と子供は置いて、ウチに戻ってくればいいんだよ。」
この母の要介護度は1。・・・その判定の度合いはあくまで動かない足と腰。
近頃物忘れは増えたが年齢なり。つまり判断力・思考力になんらの支障も認められない。
つまり、天然、ナチュラルに上の如き判断をしている。
追い詰められている分、通常の3倍増量で毒を、吐く。

沢山の呪詛のつぶやきを聞こえないフリをして、荷物を解き、さて次は父のところへ・・・と

「アタシも連れて行け。」

・・・母の車椅子を押して、病棟へ。
(父の病院と母のステイ先は2階が渡り廊下で繋がっているのです)

父、ベッドの上。うつらうつらしている。
母はそこに乗り込み
「早く元気になって退院するんだよ。いいね。判ったね? そうしないとみんなが困るんだよ。」

・・・アナタがそれを云いますか。・・・Σ( ̄ロ ̄lll) 

父を耳鼻科の外来へ連れて行く。
十時の予約。外来の狭い待合で、誰かが通るたび、車椅子をどけながら待つ。ひたすら待つ。
十一時。先生の診察。
「・・・うーーん。食べてるところを見たいねぇ。なに、娘さんはあれなの、今日中には県外へ戻るの?
そしたら・・・ちょっとだけ早めに呼ぶから。お昼の時間、食事持ってもいっかいここ、きてくださいね。」
どこかから出向している耳鼻科の若い先生がそういうので、一度病室へ戻り、再度、
十一時半に耳鼻科外来へ。
待つ。30分。一時間。一時間半・・・・・。見かねたのか病棟の看護師さんが中を覗いて聴いてくれるが、
都度耳鼻科の看護師さんが

「そうはいってもこちらも予定を動かして入れてるんだから・・・。」

ひたすら恐縮して待つ。少なくともワタシは、今は、モメたくない。そんな体力も無い。

(この耳鼻科の看護師さんは、ワタシが県外から来ていることを知ると、「・・あらー、でも、自家用車で来ているなら電車の時間は気にしなくていいよね。都内よりは一時間くらい、近いしね。」と云う。
・・・いや、だから。ワタシはケンカは売ってませんから・・・。)

さらに四十分後、父、呼ばれる。
耳鼻科の先生の前で、一口、スプーンで食事 (細かく刻んだミキサー食) を口に入れた父。
同時に鼻からスコープが挿入される。・・・う、見ているワタシが気分が悪くなる。

「さ、おじいちゃん、噛んで、飲み込んで・・・。」

あんなものを鼻から入れつつ、ヒトは噛んだり飲み込んだりができるものなのだろうか・・・。
父は指示通り、噛んで、それから飲み込もうと必死に喉を動かす。動かして・・・・・ 

「・・・あーー、入っていかないな、はい、もう一度ゴックンして、ゴックン。」

スコープ、入る。動かす。「はい、一度ゲホンってして。それからゴックン。」

看護師さんらが愛の手のように「はい、ゴックンして、ゴックン。」

見ているワタシが「ゴックン」してしまう。幾度も幾度も「ゴックン」を繰り返す父。しまいに両の目から泪を流しながら。

「・・・あーーヤバイヤバイ、吸引、吸引!!」

先生、あわててチューブを喉に突っ込む。ぉぃ、ちと待て。鼻からスコープ、クチからチューブ、・・そんなの
この年寄りに耐えられるわけが・・・・
さらにあわてた看護師、指を父親の口の中に突っ込み、只でさえ痩せて外れやすくなっていた入れ歯に触れてしまったらしく

「・・・あっっっっ!!!」

入れ歯、口腔内に落下。喉まですべる。「あ、っっヤバイヤバイヤバイ!!」(先生の声)
寸でで吸引の管が入れ歯を捕らえた。・・・・・・・

ワタシは、この一部始終の中、ただあっけに取られ・・・あとで、気が付いたら握り締めた手の中に爪の跡がくっきりついていました。よほど焦ったのでしょうね。

先生の所見: 喉の筋肉が極端に弱っており、通常食の嚥下は難しいでしょう。
・・・原因は判らない。内科の先生と相談の上様子を見たい。来週まで、糊状のかゆか「それっぽいもの」を出して様子を見たい。・・・(先生、ちとヤングな様相。)

ワタシの頭の中:・・・危なかったでしょう、今さっきかなり危なかったんでしょう。『ヤバイ』っておっしゃいましたもんね。ヤバイって・・・・入れ歯過嚥するとこだったんじゃないんですか。・・・・

病室に帰ると、看護師さんが

「お父さん、昨日は通常食が食べられた、と思ったんだけどね。残念だったね。」
それがホントに心から言ってくれてるように思えて慰められたワタシだった。

これからまもなく帰る(他県の自宅へ)旨伝え、宜しくお願いします、と云うと
「気をつけて帰ってね。何かあったら知らせるからね。」

困るんですよねぇ、家族の方が居ないと・・・という目線で見ているヒトと、事情を汲んでくださるヒトと、
少なからず分かれるんですね。看護師さんの対応も。
たまたま父の担当の看護師さんは運よく、通院でも父を見知ってくれており、事情も或る程度汲んでくれ、またワタシの立場も気遣ってくださる・・・・・(ように見えた)

これだけのことが当事者と身内にどれほど力をくれることか。

今んとこ 心のオアシスはこの看護師さんだ。
今日一日、他の人に下げた角度より2割り増し深い角度で頭を下げて病室を後にしたワタシなのでした




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