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飴ちゃんをもらう。 [折々に]

P1040607.jpg

夏の午後。
にわかにひと雨きているころ。
午睡にまどろむワタクシのところに
ピーンポーーン と 無粋なチャイム。

・・・はい?

ひしゃげた女性の声で
『・・・ワタシね、怪しいものじゃないんですが、ちょっと 出てきてくださらない?』

「はぃぃ?」 ( 『相棒』 杉下右京 風に)[眼鏡]
・・
明らかに怪しいではないか。インターフォン越しに写っているのは
・・・
けっこうなお年を召したご婦人。画面を覗いたり離れたりしながらこっちを見ている。
(まさか「この界隈に住むご年配のAさんがこのワタクシに真っ向勝負を??!」) (謎)

  ※クスリはもういい

・・・もうゼッタイ〇〇の勧誘に違いないこれはもう鉄板だいつもの手で撃退したろええそうですワタクシ
多神教で現在はゾロアスター教義に幾ばくかの関心がありまして・・・・・[スペード][スペード]
頭の中を黒い妄想が渦を巻く。

夏ですからね。アツいですからね。
不振な訪問に応える方もあからさまに構えるワケです。[眼鏡]
「・・・なにか御用ですかァ?・・・今、出なくちゃいけないですかァ?」
うわ、いけ好かないワタシ。[足]
この老婦人曰く

「出てきてもらいたいの。ワタクシ怪しいもんじゃないんです。ちょっとオタクの息子さんに渡したいものがあって・・・。」

え。息子? 渡したい?

いぶかりつつ出て行くワタシ。
門扉に傘をさして立っていた明らかにご年配、のご婦人は大きな口を ニカッ と笑って奥歯まで見せている。

「アタシね。怪しくないんですよ。ほら、すぐそこの〇番地の〇号に済んでます。
〇〇と申しますんですよ。
ホラ、いつもね、お宅のお坊ちゃんと あとお友達のオンナの子達とね・・」

あーー。
判った。[ひらめき]「飴、のおばあちゃん」 だ。

・・・学校帰りの子供達
(主にこの近所なので 息子と他三人の同級生の女子達)
を見かけると、おもむろに バッグから飴をざらざらと出して子供達一人ひとりに配る。
飴には大変季節感・バラエティーがあり、五月にはこいのぼりのキャンデー、
初夏には紫陽花の包み紙に入ったドロップと なぜか沖縄黒飴。・・・そして子供達が写ったスナップ写真を
子供1人ずつに配ってくれたりした。

その愛は子供達だけではなく、実は割と一部の大人にも及んでおり、ご近所の方から

「ワタシね、あの方にバス停でご一緒するたびに 飴(あめ)をね、いただくのよ・・ 
もう、「いいですから(笑)」って
云ってもね、出すのよねーー。」

どうも気に入ったヒト、には飴の他にも様々なノベルティーを渡しているようだ。
身の上話を聞かされた方曰く
「・・・ヒトが好きな方、なのよねぇ・・・きっと。」

これまで話にしか知らなかった 飴のおばあちゃんが このヒトか。
彼女はバッグからビニール包みを四つ、出してきて

「コレね、これ ワタシの友達に買ってあげたら 『願いがかなったわぁ』 って云う
ふくろうのストラップ ね、
子供達にも今度是非、あげようと思ってて、東京にいる息子に買っておいてもらったの。
それでね、今日届いたからね アノ子達に届けよう、と思って家に行ったんだけど・・皆さん、お留守でねぇ。
・・・幸い、オタクは居たので、・・・ぼっちゃんは、お出かけよね」

ぼっちゃんは隣の市の将棋道場 に出かけている。

「・・・そいで、お手数なんだけどね、面倒だろうけど、これ、オタクさんのお坊ちゃんにお渡しして、
あとの子達配ってもらおうとかと思って・・・。
アタシ、ほら、もう三十八、だからさぁっ アハハハ、・・・ 渡して歩くの 何回もだとしんどくて。・・・
あともう二十年は生きよう、って思ってはいるんだけど(笑)」

わーぉ。八十三歳。 なんたるお元気さ。

ストラップを預かる旨と
四人の苗字と名前が一致しないので 女の子がくれたお礼の手紙の裏に
四人分の名前を書いて欲しい、との依頼
「かしこまりました」 と引き受け
いつもお世話になっていること この機会にお礼を申し上げたら

「あら、アナタ、ちょっと待ってね。・・・」  と ゴソゴソ。

ジャン、・・・飴ちゃんだぁ(笑) [るんるん]

「・・・これね、大人専用の飴だから、子供にはあげちゃだめ、よ。
これはニッキ が入ってるからね。 ニッキ、わかる?  ワタシは大好きなんだけどね。」

そういってまた パカーーッ[ぴかぴか(新しい)] と 笑う。

ニッキの飴ちゃんを ふたつ、ワタシの手に握らせた。
飴のおばあちゃん、は 何度もアタマを下げながら 手を振りながら 帰っていった。


夕方。
帰って事の顛末を聞いた息子は早速 「飴のおばあちゃん」 にお礼の手紙を書き・・・

「お礼、書いといてねーー♪」
「うん、僕、ちゃんと書いておいたから。」


『うちの母も飴をもらってしまい、どうもすみません。』

さらっ と書いて
とっとこ歩いて届けに行った・・・・・子供に気を遣わせてしまったようだ。[たらーっ(汗)]


(帰った息子の胸には 鎌倉名物 『鳩サブレー』 がしっかりと三枚、握られていた。)






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あゆさこ


読んでて、微笑んでいる私がいました。(*^_^*)
このおばあちゃん、cassisさんの息子さんたちとのコミニュケーション、とっても、楽しみにしているのでしょうね!
cassisさんにも、飴をにぎらせてもらったんですね!
いいなぁ~。(#^.^#) フフッ!

by あゆさこ (2012-08-12 19:53) 

rtfk

おばあちゃん 生きがいの一つなんでしょうね^^)
息子さんの気遣いも素晴らしい☆

by rtfk (2012-08-13 04:13) 

ryang

私もだいたいいつも飴もってます。
だいたい一緒にいる人が「お腹すいた」と
言い出すので、飴あるよ!と出して
なだめるのに役立てます(*^^*)
by ryang (2012-08-14 08:12) 

cassis

●あゆさこ さま ありがとうございます^-^。

このあたりは住宅造成地で、地元民がほとんど居ません。
人間関係が希薄・・・ではなく(よい意味で)淡白、です。それでも時々
要所要所にこういった方がアクセントになって、全体のバランスが
取れているのかもしれませんね。

●rtfk さま ありがとうございます^-^。

元気で絵に描いたような世話焼きおばあさん、みたいなもの
なれそうにないけど憧れは多少ありますね。

●ryang さま ありがとうございます^-^。

別に飴が特別好きだ、というワケではないのに
手に握らされる、と妙に嬉しい、ということに気が付きました。
・・・こんど握らせてみては。(相手にもよるかなぁ)

by cassis (2012-08-14 22:00) 

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