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退去。 [介護施設]

早朝から車を飛ばし、二時間半。

毎度のことだが 実家まではきっかりそれだけかかる。

母の施設から引っ越す前に Rケアマネは

「お母様に・・・実家に一度戻らせてあげたいんです。・・・ご本人は、仏壇を見るのもイヤだ、
おっしゃるけど
けじめとして・・・当分自宅にも戻れないハズだから
お仏壇にご挨拶とご焼香をして、亡くなったおじいちゃんと少し、お話をさせてあげたいかなぁ、と。」

・・・そんなことを云うて下さるケアマネ。ちくしょうヤバイぜ グッと来た。[ふらふら]

(でもそういう浪花節は 1ビットも理解しない母ですし 娘も嫌いです。)

そゆわけで、ワタクシらは施設に立ち寄り、荷物を作った後、実家の鍵を開けて、母とケアマネの車を待つ。
そういう段取り。

二時間半かかって 施設の母の部屋に着く。
・・・ダンボールがいくつか置いてあった。貼り付けたラベルに内容物が書いてある。

「Rさんが荷物を作ってくれてさぁ」 と母。 ・・・・・・・。 

(そしてこの後  母、ケアマネ、我々と揃って実家の鍵を開け、母がお仏壇に手を合わせている間、我々は
転居先に必要であろう最低限の荷物を 大慌てで作った。 押入れから出した布団のセットは 相当かび臭かったが
お日様に干している時間は無い。)

実家は 冬の凍結対策で 止水栓をとめてあるので 長居は出来ない。
トイレも母親の一回をぎりぎりのリミットにして
そそくさと鍵をかける。


昼食を外で済ませ、時間まで母の部屋で待機していると、ノックの音に続いて
介護士の女性が 次々と入室してくる。
今日は非番なんだけど、という若い女性が、母の手をとって、「泣かないつもりだったのになー」 と
云いながら 泪を流してうつむいている様子は 正直 辛い。

・・・ 母は意地っ張りなので、ぎりぎりまで泣かないだろうな。

泪の理由を訊いたら駄目かな。・・・あの、アナタ方は、どうして泣いてくれるんですか、と。

そんなことを訊いた刹那に「物語」 は ちっとも美しく無い方向に流れてしまうんだろうな。


Rケアマネが部屋にカオを覗かせて 「時間です、そろそろ」。

ロビーに車椅子を押して出ると
男性介護士の2人が、 「あ、ちょっと待って」 とケアマネに。

なにやら綺麗に包装された包みを出して

「これ、皆んなで最後に撮った写真なんだけど」 と 母に。 
皆の一言が添えてあるらしい。

ロビーに集まった利用者の老人たちから 「またね」「さようなら」と お別れの言葉が。
ケアマネに懇願されて、皆んなと最後の写真。
母と近頃ケンカしたばかりだ、という男性入居者も( さもありなん。。。あーいう性格の母、です)

「アンタ、居なくなるんか。寂しいな。がんばれや」 と。

ここに至って母のガマンの細い糸も切れたらしい。 感極まって俯(うつむ)いてしまった。


・・・・・・。



家族ですか。

こんなときに泣ける立場の家族って、どうなんですか。 
ワタシたちがそもそも余計に動いたりしなければ
母の幸せはそれがつかの間であれ、相対的にもうちょっとの間くらいは 続いたのではないですか。
・・・ぐるぐる自問自答。あくまで自問自答。

少なくとも単純な絵ヅラで云えば、今、家族たるワタシが一番の悪者なんじゃないの



・・・だから、ホンの少し、今 この感動的なシチュエーションから

目をそらさざるを得なかった。


「おばあちゃん泣いてるね」 という息子に

・・・

「卒業式じゃないんだからさ。」  という返ししか できませんでしたよ。




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ryang

おつかれさまでした。
この国の年齢分布はおかしなことになっているので
核家族化が進んだ今、社会資源をどんどん投入して
いかないとどうにも身動きがとれませんよね。
10年後、どうなっているんだろう。と切実に思います。
医療は高度化する中で平均寿命だけが延び、
お世話を問題とする人がどんどん増え、若い人がどんどん減る。
しんどいことになるのがわかってて、どうしたもんか。と。

by ryang (2013-04-01 01:23) 

獏

家族 世間 親戚 息子 母親 実家 仏壇 墓 
いろんな単語と それにまとわりつく感情が渦巻きます
でも 当事者は俯瞰的に見なくてはいけないことが多い
第三者や他人は 真心だと思うけど泣ける
当の本人は 泣くような余裕はありませんよね。。。

by 獏 (2013-04-01 23:09) 

cassis


●ryang さま ありがとうございます^-^。

場所の確保の次には 費用の壁が立ちふさがり。。。

そうなんです。 先日漠然と計算してみたら老後の生活、
一人アタマ 一千万ではよほど介護度が高くない限り
よそ様に面倒は見てもらえない・・悠々自適の生活なんて絵に描いたモチ。
ましてこれが夫婦2人、となると・・・。
恐ろしさに目の前がくらくらしてきます。一般家庭の我々はせいぜい、丈夫な体を作ってコロッと死ぬ。
そうでない限り自宅でのたれ死ぬしか無いのではと。
おかしいですよね。こんなの。

来世で政治家の道が開けたら 一生懸命考えることにします。(ないって)


●獏 さま ありがとうございます^-^。

世間、かぁ。・・・
近頃ワタクシは相当数冷たいオンナになりました。 どんなに感動的な物語にも、「その後」がある限り 避けられない不幸が主にあって
そのトップオブザトップスが 「老後」だな、と。
ソレを考えるだけでどんな泪も引っ込みます。人生の「修羅場」は最後に訪れる。
総決算で、ヒトの価値って測られるんでしょうね。だからといってその時
時分は真心と誠意でもって他人を擁護することができるか・・・

無理っす。己で手一杯。ならば今から 上っ面の付き合いなんてものは
しないほうが世間と自分、お互いのためだ、とも。

母とその周囲(世間)を見ていて ちょっと思いました。 


by cassis (2013-04-17 20:49) 

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