SSブログ

電王戦第4局。 [つれづれ将棋]

電王戦 第2局 (スポニチアネックス)
電王戦 第3局 (スポニチアネックス)

電王戦、第2局、第3局とも人間側(プロ棋士)の負け、でした。

そして迎えた第4局。
塚田九段 vs puella α(プエラ アルファ)。

ソフト開発者の伊藤さんは敢えてヒール役を買って出ている感じの巧い廻しぶりで
(ホントはいいヒトに違いない。そーいう臭いがする。)w


人間側の塚田九段はタイトル獲得歴もある油のノったベテラン域の棋士ですが
亡き米長会長に誓って自ら立候補しただけ有り他の若い棋士に負けない話題性を提供していました。

週末という悪条件にも関わらず?
ニコ生正規会員様でないワタクシどもでも、追い出されたりせずPCの立見席でじっくり観覧できました。

そもそもお行儀のよろしいオーディエンスばかりですが?
第1局からここまで、さほどいやらしい煽りもなく、現地会場とネット観戦者一体となって盛り上がることが出来ました。子供が一緒に見ていてもほぼ問題ない発言ばかりで、このあたりさすが?の将棋界。地味ですな。
(だからといってセーフモードは必須です。)


結果。
230手 両者入玉となり 持将棋による 引き分け。

入玉とは
持将棋とは

  
関連記事: 『電王戦第4局は持将棋』

序盤は曰く「まったり指せば練習では結構相手のミスを誘えたので・・・」 と塚田九段。

自身、攻撃的な棋風を抑えて「まったり」 ゆっくり 相手の「暴発」を誘う作戦を試みたが、
練習で指した際の隙はpuella α には一切見えず、冷静に、着実に最善手を選んでくる。まるで

「昔 指しては負け続けた谷川浩司の指し手のように」 感じたという。

入玉を狙う作戦は、コンピュータならではの実戦経験値の少なさをつける唯一の作戦として念頭に入れていた狙いの一つだったが、それでも、中盤から「はっきり悪くなった、と感じた」 と認識していた。

たとえ入玉を狙ったとして、盤上は
どう見ても 持将棋になっても塚田九段の持ち駒が足らない。

解説の木村九段の、(半ば投げやりな) 応援トークが妙にウケて「神解説」とはやされている。
盤そっちのけムードの会場とネット観戦者を尻目に ただ1人、

ハンカチで額の汗をぬぐいぬぐい
体を揺らし盤上を睨む塚田九段。

・・・・・・もういいよ。投了しようの声。 

しかし

ここから 塚田九段の孤独で壮絶な戦い は始まる。



嘲笑・揶揄の飛び交う中

一歩一歩、崖の石にしがみつくようにして這い登り、 自身の玉を相手陣側に潜ませて。
まるで自陣と相手陣が逆転したようなへんてこな盤面。


『こんな将棋、プロの将棋じゃないww』
『もういい、投了しろwwwwww』

『今年度最高の迷棋譜ww』

草の生えまくるコメント。
ワタクシのような素人には棋譜の良し悪しはわかりませんが

会場の人々すら 手が一手進むごとに失笑を漏らしていてるのは判りました。
盤上の半分以上が赤い成り駒。まるで『はさみ将棋』のよう。

塚田九段は自分と相手が一手指すごとに指で数えている・・・・あれとあれとあれ、「よし。」 
うなづく姿にまた失笑。

『指差し確認wwwwwwwww』

塚田九段が休憩に退場しかけて コンピュータが間を置かずに指したのを見て速攻戻ってくる、その事象すらネタとして草が生えまくる始末。

『どこいくんだよ』
『といれww』
『戻って来たよwwww』 

(そりゃトイレくらい行くでしょう)


ハンカチで汗をぬぐっては幾度も幾度も 「指差し確認」で 駒を数えるのを止めない塚田九段。
そのたびに会場に漏れる笑い声。もはや面白い、としか形容しようのない局面。
(また解説の木村八段が巧い上に読みが当たる)

その笑い声に気づいて振り返る塚田九段。・・・汗びっしょり。カオを真っ赤にしてハンカチでぬぐっている。

しかし。


大盤解説の木村一基八段が はた、と 「もしやこれは・・・」

「もしかすると もしかするかもしれませんよ」 と。


もしも持将棋狙いだ、としても、この終盤にきて
あまりにも駒が足らないではないか。相手のpuella α もそこはキチンと入玉を狙って、自陣の玉を
上げ始めた。ああ、やっぱり無駄だったよ・・・。コンピュータにもしっかり 入玉の概念は理解させてあるんだね・・・。

しかし。

ここにきてなお、塚田九段は 諦めていなかった。
そして 220手を越えた頃

最善手しか指さないはずのコンピュータ・puella α が 徐々に疑問手を指し始めた。
・・・笑われているのが塚田九段だけではなくなったのだ。

全五台中 第2位の実力を持つコンピュータ  puella α のまさかの「珍手」。
詰ます玉が消えた相手陣中で ひたすら「と金」 作りに励んでいる。

その隙に ひとつずつ 相手駒を慎重に獲得していく塚田九段。
しかしまたそうはさせじ、と
あくまで守る手はやはり鬼手の puella α。

(どうでもいい話でしょうが・・・puella って ラテン語で「女の子」 という意味があるそうですよ・・・
puellq Magica → 『魔法少女』 ) (伊藤氏は いいヒトの上にア〇オタなのでしょうか)
v( ̄∇ ̄)ニヤッ 

閑話休題。

木村八段 「もしもここから手を間違えなければ・・・ 

もしかして塚田九段は・・・引き分けを狙えるのかもしれませんよ。」


笑われても揶揄されても ひたすら汗を拭きながら盤上と自身の駒の点差を確認し続ける人間。

ひとつ、またひとつ。・・・そしてあとひとつ。

草、から激励に。笑いは相変わらずあるものの、それでも声援の声が徐々にウェーブに。

一手 1点。取られては取り返す。一手一手の攻防、というには余りにも子供じみた、しかし
生々しいこの駒の奪い合い永遠に続くのかと思われたが

ある時点で 大きく塚田九段がうなづいた直後

「・・・これで二十四点、持将棋による引き分けを持ちかけるチャンスがきました。」  解説の木村八段。


コンピュータに提案・・・すなはち、開発者への、提案、である。

世話役が入室する。

『指しなおししろww』

メッセージではまだそんな揶揄も聴こえる中、さらに三手、四手進んでから

・・・塚田九段から持将棋提案のアクションが。


「・・・いいですよ。」 とpuella α 開発者の伊藤氏のレスポンス。
ウチはそれでいいです。」


これをもってして、人間とコンピュータの史上初の、合議による持将棋引き分け、という結果が生じたのである。


さて三十分後の記者会見。


「中盤の悪さから投了も考えたか。」 と問う記者の質問に対し

塚田九段


「はっきり悪いのは判りましたが・・・・・

いえ、チーム戦ですから、 投了は・・・自分からは・・・・・・・・」

ここで塚田九段は涙ぐみ、それ以上のコメントは不可能に。

puella α 開発者伊藤氏曰く 「勝ち、を 逃しました。・・・それに尽きますね。」   ・・・。


名棋譜を残すことも棋士であれば当たり前に目指すべき高みではあると思う。

もちろん観戦する側も大いに期待している。

(『感動をありがとう』 というヤツです。)

しかし電王戦で戦う相手はコンピュータ。

至上命題、0か1か 最大譲歩で イコールか。

「美しい手」を 指すことを目指すというソフト(『ツツカナ』など) 
それは結果値としてそういうものを生むあるいは近似値を吐き出す、というのであって
美しい棋譜なぞというものを前にしてもコンピュータはそもそも感動しない


この手で負けたなら惜しくない棋譜、というのは
人間がCOMに挑む、という事態において
個人で挑むモチベーションとしてならば最高だろう。人間が負けた時の素晴らしい言い訳にもなる。

しかし

人間が負ければ、決定的にCOMの勝ち。それが第4局、塚田九段 vs puella α 戦

死力を尽くしても もはや勝ちは無しと悟れば
あとはただ1つ。
盤に齧り付いてでも引き分けて 次回の大将戦に引き継ごう。
どんなにみっともない棋譜でも、笑われても、負けずに次に繋ぐ。

人間として、やれるぎりぎりのところまで、やる。

そんな悲壮な決意があのに出ていたのではなかったかなぁと。

持将棋は立派なルール。厳正なルール下で 引き分けに持ち込んだのだから
素晴らしい。堂々たる結果だと思います。


ソフト対プロ。

疲れを知らず、間を置かず、常に最善手を指すようにプログラミングされている相手。

云わばラスボスに 人間なんて、初期装備で挑むドラクエみたいなもんじゃないかな。
正直無茶振り。米長会長も 将棋界を盛り上げる為といえ、とんでもない遺言を遺していったものですね。

しかし、そのリセットの効かない0-10ゲームに『裏技』 を見つけたヒト。

それが今回の 塚田九段、ではないかと。



なすべきを、淡々と成す。

ワタシはこういうのが ホントに『男』 だな、と思うのです。 (ああ、浪花節だ)



さて、次回4月20日の大将戦。
いよいよA級棋士 三浦弘行八段 vs GPS将棋。

第22回コンピュータ将棋選手権1位
東京大学にある800台近くのPCを接続し、1秒間に2億8千万手を読む最強将棋ソフトを相手に

三浦八段 どこまでやれるのでしょうか。

(なんか近頃痩せ方がfハンパない三浦八段ですが・・・)


PVカッコイイよ。(電王戦 公式P)



参考:(マイナビニュース記事より)

なお、終局後の会見に出席したドワンゴ会長・川上量生氏は、今回の「第2回 将棋電王戦」についてユーザーからの反響が大変大きく、まだ将棋連盟から正式な回答はでていないものの「第3回 将棋電王戦」開催を目指しているとの意向も明かしている。

会長、ゆーてましたね。・・・・・・


大変ですよ。プロもね。(^_^;)

【送料無料】ドキュメント電王戦...

【送料無料】ドキュメント電王戦...
価格:1,680円(税込、送料込)


nice!(4)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 4

コメント 2

獏

お早う御座います^^)
見ていなかったのご解説有難く拝読いたしました
結果だけはたった一行の報道で知っていたのですが。。。
こんなドラマがあったのですね。。。
我が息子は知っているのだろうか~(@@;)))
人間が機械に負けなかったというだけで
なんだか凄く誇らしく気持ちいいですね☆

by 獏 (2013-04-16 05:14) 

cassis

●獏 さま ありがとうごさいます。

どんだけヒマなの(^_^;) って思われますよね。わはは。
実際は、それ以前の ponanza、 ツツカナ 各戦の方をむしろ
かぶりつきで観戦していたのですが・・・
正直 第4戦については、最後の結果だけみとけばいいやーー・・
くらいに。
中盤から 評価も大きくCOMに傾いていましたし。
でも、終盤の逆転を見られたのは良かったです。
上手くいえませんが、「感動」と軽々しく云えない何かがありました。
若い世代の全力投球とはまたちょっと違う気がしました。・・・
(イカン、自ら線を引いてしまったゾ)


by cassis (2013-04-16 11:47) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

毒を吐く。畑を起こす。 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。