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夢を見る。(父) [介護・番外編]

夢を見た。

(入院中の) 父の 夢だ。
昔、そんなことがあった、と どこかで思い出した。

父と ワタシ(多分小学5年生くらい)  は

・・・近くの 河原までおりてきた。
夏休みももうすぐ終わる頃。


きっとねだりにねだって連れてきてもらった。父と遊ぶのは年に何度も無い。

父が忙しいビジネスマンだ、ということではなく
父とのかかわりは生活に直結していて
このヒトは 仕事の無い日曜日は 家の畑仕事に精を出すので
ワタシは呼ばれれば そして気が向けば手伝っていた。
専業農家じゃないから 強制されるほどの作付け面積でもない。

(母親は その昔 患ったらしい呼吸器の病気の
自分で勝手に「後遺症」と名づけた病名のため
やはり気の向いたときに手伝っていた。)

常に身近に居た父親と、それでも「遊ぶ」ことはめずらしく
川遊びが無条件に好きだったワタシはそれに関わってくれる肉親がやはり
瞬間 無条件に大好きだったのだろう。 
クリアに覚えている。空気の臭い。お弁当に持たせてもらった
トウモロコシの まだらな模様。白と、黒。

父は、手作りの竿(さお)に 鉛の錘(おもり)を 釣り糸にかませ

「でっかいのが釣れると イイな。」 と笑うでもなく 云っていた。


河原に下りて 大きな石がごろごろしている水の流れに糸をたれる。
近所の子供達が 海パン姿で 石をはぐって遊んでいる。
父が 釣り糸をたれるすぐ側まで来て、はしゃいでいる。

「そんなに近くで騒いだら、サカナが逃げっちまうだろうが。」

父親の懇願に 悪ガキたちは笑うのだ。ワタシも実は心の中で笑う。
そんなことに関係なく、釣れるヒトは釣れる。
腕の無いヒトは釣れないのだ。

それでも、たまさか訪れた父の 「休日」らしく過ごす姿を
できれば邪魔されたくなかったから
悪ガキ(ほとんどは上級生だ) 等を 懐柔して
向こうのおっきな石のところまで 「ようい・どん」 で 誘導するのだ。

やがて 父の手作りの ちゃちな釣竿の先に
ヤマメが 岩魚が 躍る。 

夢 だから。

「ほぉっっっっ」 

笛のような声を出して
父が 喜んでいる。

・・・そこで 目が覚めた。



先日 父の主治医から 電話があった。

今日から数日後に帰省するワタシに 

「あらかじめ話しておきたいことがあります。」 と。


「お父様の心臓が あまり良い状態ではありません。

ポンプは血液を先まで送り出せずにいます。」

「・・お電話で、なんですが」・・・


「・・・もしもお父様の心臓が止まった場合 

延命措置は 望みますか?」


ヤマメが 岩魚が躍るあの水の輝かしさ。

呪文のように そこに還ろうと うっすらとワタシの思考は喘ぐが。


・・・年を経たものが先に逝くのが自然なのだ。

けれど。

けれど父は
「幸せ」 だったか。

今、幸せであるか。
幸せである、と 数秒後

思ってくれるか。
相対的に『未来』 と呼ばれる時間軸の中で

幸せである
と 思うべき なのか。
ワタシはワタシの為に?
・・・。


特別なことが起こっているとは思わない。
父親が娘より先に
未知の場所に向かうのは自然なこと、と
この不肖な娘も決めている。
逆でなくて良かった。
私が悲しむのが自然で
父親を悲しませるようなことが
無くてよかったのだ、と。

ただ、唯一
数えられる程度のヒトの死を見て来て

「自然な死」 なんてものは

数えるほどすらないなぁ と思う。

こんな不自然なものに
敢然と 向き合えるほどには

ヒトは 強くもない。・・・



父の為に
一日繰り上げて帰省することは
あえてしないことにした。
何に対してなのか判らないが

先々を読んで行動したりしないことが
今の ワタシにできる

ささやかな抵抗のつもりでいる。


あいかわらず日中は日差しが辛いが

秋の始まりの空の色が 見え隠れするこの頃
次の帰省は 平日・息子の秋休み



息子と二人ですることになる。


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rtfk

もし自分が同じ質問を渡されたら
その重さに尻餅をついてしまうことでしょう。。。。
実に・・・実に重い判断ですが
どちらにしても どちらにしなくても
許されると思うのです

by rtfk (2012-10-08 16:43) 

ryang

難しいお話です。
一つ、こういうケースにおいてご家族が「そこまで考えてなかった」
ということがないよう、言わせていただくと、延命措置をどこまでと
捉えるか。自分で食事をとれなくなった人に胃瘻を作るのも
延命の一種ではあります。

人工呼吸器に乗せることだけでなく、心臓マッサージはどうするか。
血圧が下がった時に昇圧剤の投与は。輸血は。
これらはみんな延命措置に値します。
秋休みに帰省されたとき、医師とよく話をしてください。
ハテナ思うことは解消されるまで聞いてくださいね。
病院は全て状況を説明したあと、家族に全ての裁量を委ねます。
素人の家族に、どうしますか。と。

いざそのとき、もっと早くきいていれば。知っていれば。
という後悔はされないように。と思います。

すみません、長々かいておきながら気の利いたこと言えなくて。

現実にご家族が立たされる場所、迫られる決断を思うと
胸が苦しくなります。




by ryang (2012-10-08 22:46) 

cassis

●rtfk さま ありがとうございます。

なんというか、
誰しもに訪れる事が当たり前に起きているのでしょうに
仏陀でもキリストでもない一般人たるワタシには
泰然と受け入れる程の技量はありませんね。
こんな情けない墓守娘でも、許されるでしょうか?
ケアマネに「誰か居ないの??」と詰め寄られて気づいたのですが
ウチにはもう親戚も残っておらず身内ってほんっっとに
ワタシだけなんでした・・・。(´Д`ι)アセアセ


●ryang さま ありがとうございます。

やはり、先端で関わる人の声は大事ですね。
胃ろうについては、かなり早い段階で話かありましたが、
確認、というより
「胃ろうにすれば、大丈夫」 的な方向で先生は話されたので
少し、違和感を覚えました。
・・・決断を迫られる立場、でつらつら思いつくまま書いていますが
迫らねばならない立場、というものもあるんだろうな、と。

ご自身が磨り減るときも沢山あるでしょうに
ワタシを気遣ってくれて、有り難いです。
心して、極力後悔を溜めないよう、先生を問い詰めて泣かしてきます。
(コラコラ)

●朝晩、急に冷え込むようになりましたね。
職業人の方にはどうか、どうかご自愛のほどを。
by cassis (2012-10-08 23:47) 

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