『愛は勝つ』。 [記憶]
1曲お付き合いの程を。
数日前に台所仕事をしながら、思わず知らず口ずさんでいた KANの『愛は勝つ』。
どこかのCMで聴こえてきたのだったか忘れたけど、
就職してバリバリ現役の頃の ある時期のテーマ曲。・・・誰にもあると思うけど
・・こんな歌に慰められ 勇気付けられる状況って、ちょっとあんまりイケてない時なのだ。
ご多分にもれず、この曲を繰り返し聴いていた時期、アタシもほんっっっとにイケてない時期で
つまらない出来事を発端にどんどん状況は坂道を転がりだし、
仕事はそれなりに忙しく落ち込む暇もないほどタイトな毎日だったが
肉親であれ 他人であれ
こと自らを取り巻く「愛」の部分、に関しては 転げ落ちた先の先に またもや深い穴があり・・・みたいな
自分でもどうしようもない寒風吹きすさぶ立ち位置に置かれていた。
せめても自ら忙しい仕事をなんぼでも作り出し、定時に家に帰ってぼやんとするのイヤさに
鬼みたいに髪振り乱して残業していた。
灯りの消えた他所の部署のデスクを見ていると、ヘンに癒される自分の来し方・行く末をふと
思ってはひっそりヤケクソになってインスタントコーヒーをワザと音を立てて啜っていた。
同部署の他のスタッフの仕事まで必要ないのに 「アタシがやっとくよぉ♪」 と引き受けたので
灯っているライトは自分の部署のデスク1つ、という状況である。
「お嬢っ、いるぅっっっ?」
さすがに21時は女子がたった一人で残業していい時間と違うよなぁ、と
さっぱり中途半端な工程を無理やりけりつけて、カバンに化粧ポーチなぞを突っ込んで帰り支度をしていると
いきなり台車を引っ張るごろごろ云う音がして
ワンフロア向こうから、威勢のよい巻き舌調の女性の声が かかる。・・・って、まだ居たんだ独り。
「お嬢、仕事、終わったの? アタシこれ運んだら最後だからさ。・・・
お嬢、パチンコ行こうよっ」
お嬢、って 当時のアタシのことね。(笑)
(※・・・ヒトはいきなりアラフォーになるわけではない) (ここ大事。)
データ集計室(通称パンチルーム)の責任者(女性)の声である。たったひとつ違いなのだが
ワタシは「姐さん」と呼んでいた。そして彼女は目の前の女性を誰でも「お嬢」、と呼んだ。
ジュラルミンケースを二つ、両手に持って姐さんは
「これ運んだら最後だからさ、行こうよ。パチンコ。ねっっ」
云うが早いかワタシの腕をぐいぐい引っ張って連れて行こうとする。・・・ジュラルミン、忘れてるよっ!!
・・・早く帰りたくないワタシは 別にパチンコが好きなわけでもなんでもないのだが
二日に一度は、彼女のパチンコ遠征にお付き合いしていた。
大体運転は彼女がする。姐さんは毎朝早朝の得意先への納品をこなしてからの出勤なので
ワタシのアパートのある方角を通るから 「ついでに乗せてやるよっ♪」 と
ワタシは会社に車を置きっぱなしで 彼女に付き合えるのだ。ラクだ。
車の中で 彼女はゴキゲンによく喋った。ゴキゲンに歌なんか歌って、大きな声で喋って笑った。
車の中だというのに 通り過ぎる車が気のせいか振り返る時もあった。
・・・それがいつの間に「長渕 剛」の『巡恋歌』 になっていて、「あ、失恋したんだな。」 と気がついた。
ハンドルを豪快に切り回しながら
「ほんとさっ、お酒はもともと呑めないけどさ、タバコも吸うなっていうから止めたのに、くっだらないっ、
まったくっっっチクショーめっっっっ」
適当に相槌を打っておく。
「・・・『今年の冬は2人で色んなところに遊びに行こうね』 ・・・とか云っておいて、なんだいっっ。
オンナ2人してパチンコ繰り出してるじゃんかっ、ねェ。 アハハハハッ」
確かに、笑うしか無い状況だな。
台に向かう時は 姐さんはものすごく真剣、だ。
お祖父さんにあたるヒトの結構濃いギャンブラーの血が流れているのだ、と云っていた。
明日が早いのでせいぜい一時間から二時間くらいで店を出る。軽い食事の後、アパートまで送ってもらう。
「・・・オンナ2人、かぁああっ、・・・寒いなぁっっっ 」
ホントにね。
ガハハ、と笑い、時々笑いながら鼻をすすったりしていた。
彼女がその大声で、笑ったり泣いたりしながら云いたい事を云っているのを
横で見ていると、ワタシの中に溜まっているものも一緒に吐き出されて行くような気がしたんだと思う。
彼女は落ち込んでいても泣いていても、冷たい風をモロに浴びながら常に前を向いているヒトだった。
静かにいじっ・・・と下を向きつつやり過ごす当時のワタシとは180度違うタイプ。
同んなじ底辺でひっそりと寄り添ってくれるヒトが必要なときはあるだろう。
それでも誰かがどこかのタイミングで引っ張りあげてくれないと、
いつまでたっても這い上がれない場所はあるな、とその時知った。
近しい年齢で独り身で、まぁ取り巻く環境にたまたま似たようなことがあって・・・
「同病相哀れむ」 というのかも知れないが、哀れんだかは置いておいて、
彼女は当時のワタシの手をがっちり掴んで「引っ張り」あげてくれたなぁ、と今にして思う。
(行き先はパチンコ店、だったにしろw)
だからワタシも、彼女の前で 「弱音」は吐かなかった。
それくらいなら前を向いて 吹きすさぶ風を顔面にモロに受けつつ、思いっきり
・・・「バカヤロー」 と叫んだほうが
お互い気分が良かったと思うのだ。
その当時、車の中でよく流れていたのが 『愛は勝つ』 だった。
「アタシら、いつ頃 勝つ、のかねぇ(笑)。ねぇ、どう思うっっ」
知らんよ、と応えて 「・・・そもそもアタシら今、負けてるのかな。どーなのかな。」
「知らんし。・・・・♪しーーんぱーーい " だらけ" だね♪w アハハハ。」
・・・まぁ、イロイロな事に、なるべく早い目に勝たして欲しいよねぇ、とかなんとか云って
どちらかが ガハハ、と笑ったのかもしれない。
もうずーっと前の話。
もっともそれから彼女はほどなく、年下の素敵な彼を見つけ、とんとん拍子に結婚を決めた。
イロイロあって、亡くなったお父さんの遺影を手に 凛、と立っている白無垢の姿の美しかったことは覚えている。
彼女が会社を辞したのをきっかけにお付き合いも途絶えたままなので
今頃どうしているか知らない。
音楽は 当時の色んな「かけら」みたいなものをごたまぜにして 引きずり出しにかかりますな。
ああ、すっぱいなぁ、と (・・・胸焼け じゃないですよ)
久しぶりに胸の奥を軽くこづかれた気分になったのですよ。
それが
台所のアタシに唱和するように リビングから ふふ~ん♪ とハミングが聴こえたので驚いて
「ね、それ何処で覚えたの??」 と息子に問うと、学校の給食の時間にかかる、とのこと。
BGMなので 歌は知らない、という彼に YouTube を見せてあげた。
『やまだかつてないテレビ』 に胸をときめかせた母の時代を 勝手に盛り上がって語ってやった。 (ワハハ
息子は気に入ったらしく、 「今度ボクが カラオケで歌ってあげる~。」 と 幾度も暗誦していた。
姐さん。・・・どうですあれから。「勝」ってますか?
とりあえずアタシは 息子がコレをアタシに歌ってくれる、って云う そんな今 です。
なつかしい。
...すいません。私、一回り下でした。これ中学生の時
ものすごく流行りました。いや、オトナだなぁと思っていたので
道理で!! と思ったのですが、年女と聞いて脊髄反射のように
同い年だと思ってしまっていました(^^;
音楽は、その当時のことを容赦なく思い出させますね。
私はオザケンが好きで、あのムニャムニャとした鼻声を
模したハナウタで歌っています(^^
by ryang (2013-02-07 01:18)
●ryang さま お疲れ様~^-^;。
お仕事お疲れ様です。
こちらこそスイマセン(笑) 子供が小さいのをいいことに?
結構 誤解を生んでいたのかも知らんと・・・(爆)
ワタシは「きっと一回りくらい違うだろうな、それくらいで済むといいな」(?)
と思っとりましたがw うんうん済んだ済んだ(笑)
オザケンは知人がカラオケで必ず歌うんですが
必ずついて行けなくなってマイクを投げますね。
世代的にはギリギリついてイケて「ない」グループなので「よせば」
というのですが・・・。
大江千里が安全圏内ですかね (JAZZシンガーになっちゃったけど)。
by cassis (2013-02-07 01:39)