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「親を看る」 と云う前に [介護・番外編]

3年前、父は病院で逝った。




最期になる入院直前まで 介護施設にお世話になった。
実に短い間だったが
父の施設生活は きっと充実していたであろう、と思う。


憶測の域をちっとも出ないけれど 少なくとも


父に支援の必要だった期間
その道の「プロ」 に 看ていただいた、という確信がワタシには在る

そして
痒いところに手の届くようなケアを例え短い期間であったにせよ

してもらえたことは 有り難いと思っている
というのは
ワタシだけの感想ではなく
きっと
父も (そして今や母も) そう思った(ている)に違いない。




ずっと子供の頃から ワタシの烙印は父・母とも共通に
「気の利かない」 娘であったため
年老いた父母がワタシを頼らない方向で
将来設計を描いていたのは当然だった、と云える。


だがしかしなんらか道筋にエラーが起こり
突如として
「長女たるもの」 というにわか家訓が出来上がっていたワケで


ひとえに

加齢の所以だった、と思う(今は)。




何故今にしてこんなことを書くのかというと
先日

介護をテーマにしたコラムを目にしたからで
そこには



「親の面倒は何があっても極力自身で看たい」 と
仕事を辞めてしまうヒトについての記事があった。
(その記事はたまたま男性の介護者について書かれたものだったが)



極力面倒を見る子供寄りの内容だったけれど




… どうなんでしょう
ワタシがもしも この人の親だったとして


自身の意思が伝えられるかどうかはおいといて
俯瞰目線で見てみれば


そんな状況が 嬉しい、って思えたりしたとして

孝行息子に育ててよかった、って嬉しくなったと仮定して
それ


正しいのか?  という疑問がわく。
それは
親のエゴなんかではない、と 言い切れるかと。

あくまで今の立場から、介護される立場になったら、という
想像の元ではあるが

ワタシは
ワタシの面倒を見させるために
子供を育てていたんじゃろうか、という疑念が沸くのではないだろうか


まぁ、それでも面倒を見てもらう立場になったとしよう


プロではないのだから
どうしたって 介護の隅々に 未経験なりの甘さや荒さが出るだろう
例えば介助装置をレンタルできたとして
足腰の不自由な人を 風呂に入れたりするのは至難の業なのだ
それを
例え自分の肉親であったとして


なれない手つきでどんなに一所懸命にやってもらったとして


「ヘタクソ」 なものは「ヘタクソ」なわけで
(実体験ですわ)

「ヘタクソ」 にやられるほどに 不自由な箇所に掛かる負担は大きくなるから
いらいら、ぴりぴりするわけで
そんなときは 肉親だから遠慮するのか
肉親だから 腹を割るのか、は知らないけれど


不自由な体に負担を強いるような不調法なケアをされるのは
当然不快だから
きっとカオに出る、と思うわね。

それで
じっと耐えてきただろう子供を ヒドく傷つけることになるとしても
いい加減highな 年齢域で アレモコレモ、とガマンしてるのはイヤだもの
例え 肉親でも、いいや
肉親だからこそ
ガマンの仮面を被っているのは 耐えられないものなんじゃないかと思うのだ。



けれども 一方この子はワタシのために仕事も辞めて
生活の全てを犠牲にして 面倒を『看よう』 としている
あまつさえ

このワタシに 『感謝』 の意を求めようとしているのに
肉体の不快を訴えようものなら ワタシはきっと
「人非人」 扱いされてしまうやも
だから
だから

だからって



ヘタクソなものはヘタクソなんだし
どんなに骨を折ってもらって今の状況が在るにしろ



… ぁぁぁあああ、 だから そこ 痛いいいいいいいいい!!!


って なるんじゃないかと 思うのだ。
そして
(こういうアンビバレンツに襲われたとき
ひ弱な現代人は 自身の身体のコンフォータブルを選択するしかない
ように思うのだ。)




一方、 
ワタシがこんな思いまでして シンドイことをガマンして 親であるアナタの面倒を
見ようとこうして傍にいるのに


不自由な老体を支えようとして 今やコチラの足腰が悲鳴を上げているのに
それでも毎日 介助の手を休めず頑張ってやってるってのに


それの何が一体不満なんだアンタはっっっっ!!!!!!!



……

ふと 思いをいたすんですが

野生動物、って 在る時期が来ると、親の方から子をテリトリーから追い出しにかかる、
んですよね。
アレ、が本来生き物の正しいライフスタイルなんじゃないか、って思うのは


ワタシだけかなぁ?
どうして 人だけが 老親の面倒を
例え自身が犠牲になってでも (ココ大事)
「看るべき」 っていう なんか判らないイズムに縛られなくちゃならないんだろう



そりゃ双方が充分満足している例も多あるんだろうし
それはそれでイイし 
けれど


それをあたかも 人として「正しい規範」 のように捉えるのは おかしいと思うのだ。
いや、人として良いコトだ、と声高に叫ぶのは譲るとして

しない人を指差す社会はイヤだと。


「アンタがワタシの面倒を看なさい」
っていう親も多いだろうけど
そのとおりにしたとして 果たして親として満足するのだろうか


いや、満足はするだろうけれど

けれどそれは 自分の意思に従属させた、という満足感なのではないだろうか。
そしてそういう親は、どこまでも自身の思うとおりに子供を子供のまま、
自分の手元に置こうとするだろう
自分の老いという現実ですら そのための手段なのだろう


それは「支配欲」 
いつまでも自分の手元に肉親を繋ぎ止めたいという
人としてどうかはしらないが 生き物としてはどうなの? っていう
欲望なのではないかと思う




脱線したけれど

「自分が看る」 という決意正しく 生活を犠牲にする子供

お互いの共依存が生きがい、っていうならそりゃ仕方がないけれど


「自分が看なくちゃ親がかわいそう」 って思うなら
もしも 親が自分の意思を示せない状態になっている場合


それは 本当にそう?
それでイイのか?  と云いたい。


親が、正しく自身と子供の置かれている状況を見据えることがもしも
出来る状態だったとしたならば、よ


馴れない介護で
子供が疲弊していく状況を 良しとするのか




そして子供

生まれたての幼子に一足飛びに近づいている親が

「自らの子供が看てくれている」 という理由だけで



ヘタクソな介助を (※当社比)
それでも有り難がって心安らかに過ごしてくれる、と 思うのだろうか?


お互いに世間から隔絶された空間で2人っきり一日中過ごす
果たして
どちらが
いや
どちらも それで居心地が イイの?


親と子、 肉親とのリレーションしかない閉じた世界で
幸せなの?
未来に希望が持てるの?




先の男性は


「それでも自分が看るのが 親にとっても一番イイことだと思いますから…」 

仕事を辞め、なけなしの貯蓄を削って 日々を過ごしている
それも尽きたら 親の年金だけが 頼りだ、と云って



体重と人付き合いは激減した、  と結んであった。



ムツカシイ……






ワタシは

老いが自分を蝕む前になんとか
自分と子供の未来に そんなことは望んでいない、と
今のうちに 残しておく手段が無いか、と 



真剣に考えているトコロだ。




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某かんりにん

cassisさん、こんにちは。

閉じた世界で親子だけ・・・これは互いにとって拷問以外の何ものでもありませんでしたわ。
亡父の入浴は初めからプロの手に委ねました。だって怖いもん。父は孫娘のようなヘルパーさんに優しく接してもらって、それはそれは喜んでました。私たちはヘルパーさんにすっごく感謝して、思えばあのいっときは穏やかでやさしい時間が流れてました(遠い目)。

で、明るい「生前意思表明」。
昨年の秋に実施しましたよ。こういうのは、相手がオトナになり、こちらもまだ現実味がないうちに、親の方からしておくのがいいと思います。

by 某かんりにん (2015-02-24 10:49) 

ryang

これは難しいですね、地方都市になればなるほど
このループにはまるお家は多いような気がします。
先日、どこかの市議の女性議員(だった)の話がニュースに出ていて「農家に嫁いで働きづめ
まるで女中で通帳もなく、年を取ったら子供に頼るしか
生きていけないのはおかしい。」というのがありました。
そういう「文化」だと子供が面倒みるのが当たり前、
社会資源を導入すると村社会で周りが「親の面倒を
他人に任せて」という目で見られるという観念にかられて
できない。となるのかも。
これだけ医療が発達してしまって、核家族が進んで
もういろいろ崩壊しているのだから、お互い助け合って
使えるものみんな使っていきましょうよ。と思います。
でも、うちの祖母は自分の命についていろいろしたためて
意思を表明していましたが、いよいよとなった時に父は
「本当は生きたいと思ってるんじゃないかなぁー」とか
言い出して、いろいろ延命をしようとしたのです。
それがばーちゃんの望みだろうか、私は違うと思う。と
こんこんと話して「やっぱり同意書を撤回した」に
なるまでひと悶着ありました。

本当、叩きだして「ちぇっ」と思われるぐらいの構成が
本当は一番いいんでしょうね。
by ryang (2015-02-24 12:02) 

Chobi.H.YAOITA

親の気持ちを想像すると難しいですよね
結局わかりませんから
自分の気持ちだけで行った方が楽です

私は運の良いことに
父を完全看護をしてくれる病院に預けることが出来ました
行かなくても良かったのですが
私か母、毎日どちらかが通っていました

同じく毎日組の奥さんがぼやいていたのですが
「まったくお父さんが倒れたおかげで大迷惑!」
「毎日来るのはとんでもなく大変!」

でも私から見ると
その奥さんは家にいるとお父さんが気になって
どうにも落ち着かない様子でした
「ここに来た方が楽だから来るんじゃないですか?」
と聞くと
「来たいわけなんかないじゃない!」
「私が来なかったらお父さんが可哀想でしょ!」
「私が悪い人みたいだから仕方なく来るのよ!」

思った通りです
自己評価を保つためでした

それで良いと思います
自分のためなのでこれは問題なく続けられます
結局この奥さんは旦那さんが亡くなるまで毎日通っていました
by Chobi.H.YAOITA (2015-02-25 00:52) 

cassis

●某かんりにんさま
●ryang さま
●Chobi.H.YAOITA さま 

みなさま ありがとうございます

極論をいえば
虐待や放棄が生じない限りにおいて
介護は後見責任の生じた人の意に沿えば良い、とは思うんですが
自分の生活の支柱を曲げて行う介護について
あたかもそのようにせざるを得ない現実があると描くメディアも狭い意味での世間というものについても
疑問を致したのであります。

そういえば
ワタシの父のいた病院も完全看護でした
看護師さんに「どうして泊り込んで付き添ってあげないの?」
と云われたものでした。「実の娘さんなんでしょ?」
結構幾人もの(ご担当でない)人から云われました。
そういった意識のループは何処から来るのか判りませんが純粋に『世間』 の目とはこういうものだ、と
感じた次第
ワタシは結果的に自分の今の家族を優先しました

そんなことで自分自身を責めている人が
結構な数居ることに胸が痛みます。
(胸が…まぁ ときどきですが)
極右の側として書いてみましたが
さまざまな意見が合って然るべき、とも思います。


ただ、介護のために仕事を辞めざるを得ない社会
というのは ちょっとNGだな、と。
(本人希望含)

ムツカシイですね。 ホント。


by cassis (2015-02-25 18:19) 

さきしなのてるりん

日本の長寿の多くは延命措置によるものという話もあり、認知症が増えたのはその長寿者の増加によるともいい。西欧ではある年齢を過ぎると、延命措置は取らず自然に任せるという習慣のようで。それに自宅での24時間介護のシステムがあったりして家族による長い介護も必要ないということらしいですね。
by さきしなのてるりん (2015-02-27 20:30) 

cassis

● さきしなのてるりん さま 有り難うございます^-^。

ワタシ自身が支えられる側になるのもそう遠いことでは
無いのですが
ピラミッドが逆型になる以上、介護者が
「自分の生活を犠牲にして」 行うのでは国家としての
破綻であるよなぁ、と
薄ぼんやりとした不安を感じております。

by cassis (2015-02-27 22:05) 

娘。

そうなんですよね。
私の父はメンタルなので「介護」が必要な状況ではまだないですが、それでも家で過ごした時の疲弊感や、お互いが、不本意だけど「せっかくだから」我慢している感じがなんともいえないです。

でも介護が必要になったら…どうするだろう。
無理しちゃうかなぁ、私。

自分には子供がいませんが、それを望む気持ちはないですねぇ。

介護職の方って本当にプロって感じがします。
(そうでない方もいるかもしれないけど)
もっと厚遇であってほしいと思うんですよね。
by 娘。 (2015-02-28 20:39) 

cassis

●娘。さま 有り難うございます^-^。

独り暮らしになった叔父がメンタルを病んだ時が
そんな具合でした。(遠い目)

叔父、といってもワタシは長いこと子供の無い
叔父夫婦とともに暮らしたので
"第二の父親" だったんです。

晩年、アルコール依存でボロボロになった彼は
母とワタシに頼り、母はソレを嫌いました。
当時、ムリをせざるを得なかった私なりの矜持がありましたが
今思えば、ラクをする方法は色々あったと思います。
ただ、「無理をする自分」を 母親に見せ付けたいと
思ったのかもしれません。

当時とは介護システムも周囲の目も
まだまだ不足分は在るとはいえ、変わりました。
娘。さんも 自分を犠牲にしない方向で動いてください。
もっともっとポジティブに戦える時代が来ます。

(それにしても介護職の方には厚遇が欲しい。
ほんっっっとに、共感します)

by cassis (2015-02-28 21:44) 

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