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お葬式にて。 [遠距離介護(母。)]



週の頭、郷里の友達(※お盆で帰郷していたようである)から
電話があった。
友達であるが 親戚にして同級生
(狭い田舎のこと)


その時のワタシといえば

夏恒例の自治会(今住んでるとこね)
のお祭りも終わり、実行委員の任からようやく逃れられると
ほっと一息ついた夜のことです


『あのね ○ちゃん。叔母が今朝亡くなりました』


友人の
父親のおそらくは姉である「叔母ちゃん」は、幼少期の病気が原因で身体が不自由になり
友人が小さな頃からずっと自宅で生活を共にしていた
そして友人の同級生であるワタシは彼女とともに
父母の農業繁忙期はなにかと面倒を見てもらっていたらしいことは
うっすら記憶にあります

小さな子供の面倒を親に代わってみるというのはそれなりに大変なことなのだが
田舎のこと

「それくらいしかやれる仕事がない」という扱いを受けていたらしいのは
子供ながらそれと解るのだった


ワタシも友達と同じように彼女を「おばちゃん」と呼んで

では懐いていたか、というとそうでもなく ただ
子供の面倒を見てくれるけれども 他の大人はあまり彼女を大事に扱っていなく
自動的にごはんとおやつを出してくれる大人という認識でいたくらい
(ヒドいな)

普段の会話から
子供の話にもそうでない話にもあまりノッてくれない大人なんだな
とは思っていただろう



「叔母ちゃんが亡くなったけど、お葬式、来られる?」




早速 鬼のような根回しをして、翌々日の有給を取得した。

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友人の兄は一人でずっと実家を守っている。
地元で唯一 何か事が起こればワタシの味方になって
きびきび動いてくれる頼もしい身内にして幼馴染


昨年 不幸な事故で母親を看取り後
残された叔母の介護を単独でしていた
叔母は要介護2だから
仕事をしつつ 残された自宅畑の面倒を見つつ
時にはデイサービスを利用しつつと忙しかったが
妹はおろか親しい友人でさえ
「愚痴らしきものをこぼすのを一切聞いたことがない」、という


さっさとお手上げして父と母を施設に預けたワタシなどは
足元にも及ばないどころか足蹴にされても文句は云えない
(そこまで)
『平成の孝行息子』だ

(決して卑屈になってません決して)

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葬儀の朝
いそぎこちらを出立し予定時間よりだいぶ早く現地に着いたので
母親の施設に立ち寄る


母親が故人宅へ「お手伝いに伺えない旨」の詫び状を書いたものをあずかる。
母親宣わく

「父親、母親、そして今回と立て続けに身内を亡くして気の毒に」
 

その瞬間 心の中の黒いワタシが呟く:


「気の毒だよね全く。

…3人も面倒みた んだし一人で。」

ひ・と・り で。  うは。

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事実葬儀の最中でも様々な場面で美談過ぎるエピソードが披露されるが
肝心要な部分が置き去りにされているようで
なんだか癪にさわって仕方なかった
まぁ 誰も何にも云いようがないけれども。


「…やっと自由になれたね」 と声を掛けようかと思っていたけれど


(やっと自由になれたけどさ もうこんな年齢になっちゃったじゃないよ。)


本当に様々なことに忙殺され、彼がこれまで「無私」で歩まざるを得なかったことが
フツーに美談にされるのが癪に障るのだ
もっとも本人はこれっぽっちも気にしてなどいないだろうけど
きっとワタシだけなんだろうけどもさ

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そんな彼・兄くん(仮称)と叔母ちゃんの関わりは
やさぐれたワタシがこう云うのもなんだが(しつこい) 
とてもウォームハートしていて
叔母ちゃんは多分(ワタシ含む)
育てた子供たちの中でもこの兄くんがきっと一番のお気に入り
だったに違いなかった。

デイでお世話になる前から 家で不安になるとお母さんではなく兄くんを捜す
という風だったらしい

特に近年は兄くんをまるで「お父さん」のように慕っていたというからな


それがある日
デイから帰ってきて ほんの数分 苦しそうな顔をしたかと思うと



「あっという間に あっけなく逝った。」と
それこそぼんやり遠くを見るように そして他所事のように話す彼であった


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迷惑を掛けたくなかったのじゃないの、とおざなりに云ってみたけれど


介護を少しも嫌に思っていなかった人に
掛ける言葉としてはこれもちっともふさわしくなくて浮いてしまったような気がする


どうなんだろう

自分とは天と地ほども気構えの違う人にとって

辛いのはこれまでなのかこの先なのか
「あっけなかった」と云う彼にはまだまだ 叔母ちゃんと伴走しながら進む
未来の青写真があったのだろうけれども

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お葬式の後の会話にて:


「しばらくの間 コチラに居ようかな、と思う。」 と友人

いつまで、と問うと 「…落ち着くまで。」と


そうだ、それがイイね。
あの広くて大きな家に 一人で住むのにはなかなか慣れないだろうから
落ち着くまでね


でも、落ち着いてしまってからリアルが襲ってくるんだよな


(すぐ目にはいる近所に
やはりデカくてがらんどうなワタシの実家が立っているんである。
ナンの慰めにもなりゃしないこの


…この、迷惑かつ巨大なモノリスをどうしよう(汗 )
自分の重たい宿題のことが頭をもたげてうんざりする
日本親不孝協会北関東支部会頭cassis)




さておき 一方で黒い妄想

兄くんはもう 近所の『孝行息子』の汚名を返上して
好き放題やってイイんじゃないか
もういっそ素性の怪しいオン●とか連れ込んでさぁ
ワイドドラマ的な展開でさぁ…

(バチが当たるのはワタシだけで良い。オホホ)


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たまたま席が隣になった 故人とあまり縁の濃くないらしい人と
ちょいと昔の話をしたら
実は中学校が一緒だった、とか


幼少のみぎり 近所の川でカジカやマスを取りましたね、という話をしたら
妙に盛り上がって 楽しいひと時を過ごさせていただきました

そうそう当時は 「足で踏むほど」魚が獲れたんですよね とか


縁なんか薄くっても お葬式が楽しい社交の場とか
思わぬ旧交を温める場でもいいじゃんね




ワタシが死んだらささやかなそういう場所が提供できれば
自分のお葬式は出すに値するぞ、とふと思いましたが
ああ、兄くんがもともとそういう人であるから
ワタシにも力みの要らないこういう場所を設けてくれているのじゃないかと

とまれ今度こそ少しは


自分勝手に幸せになればよいのだ、と
お互いちっとも当時の顔が浮かばない、竹馬の友らしき隣席の人と



そのような結論に至った次第である




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コメント 2

さきしなのてるりん

男が介護すると周りは褒めるんです。女が介護したって当たり前って感じだけど。だからやりがいというかあまり辛くなかったんじゃないのかな。人に認められるって嬉しいことだし。きっと今何となく手持無沙汰になっているんじゃないかな。
by さきしなのてるりん (2016-09-02 22:57) 

cassis

● さきしなのてるりんさま 有難うございます。

いよいよ彼は自分独りの為に生きていいんでしょうけど
そこは狭い村社会のこと
まだまだ周囲にアテにされそうでもありそれがいいんだか悪いんだか…
by cassis (2016-09-04 21:24) 

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